生物体

人間が生物の一種であることは言うまでもない。そして、人間を含めた生物全般に共通する特質、即ち生命の本質は自己更新、つまり自分で自分を作り直すということである。通常言われるところの生物の特質である代謝と自己複製は、この自己更新の二つの具現形態に他ならない。生物は、この自己更新という生命原理を、タンパク質をはじめとする有機物質で構成された構造体において実現している、。

代謝
代謝とは、自らに必要な物質を取り込み、それを使って、エネルギーや身体素材を作り出し、不要になった物質を排除する過程のことである。生物はこの過程を通じて自分を部分的自己更新を行いながら、不断の変化の過程の中で、自己の個体としての安定的形態を維持している。
生物がこの過程を不断に維持している状態を、通常は「生きている」というのであり、代謝をしなくなれば、それは即ち死であり、自然の風化過程や他の生物の分解作用により身体の統合性を破壊され、まとまった物体としては存在することができなくなってしまう。
自己複製
生物は、自己複製することで、数を増やしていく。この過程を繁殖という。自己複製は、自己の一括的更新である。代謝を通じて自分を部分的に作り直していくだけでは、個体としての劣化を防ぎきることはできない。そこで、自己のの相似個体を別に作り出すことで、生命の永続性を図ろうとするのである。
生物はすべて核酸でできた遺伝物質上に、自らの身体構成の基本的設計情報を記録し、それを参照しながら、自己の複製を作り上げていく。このとき遺伝物質もコピーされるのであるが、コピーの際に変異を起こすことがある。この遺伝物質の変異こそが、生物体の進化の大元である。
タンパク質
生物はタンパク質と呼ばれる物質で構成されており、現在までのところ、それ以外の物質で構成された生物は見つかっていない。また、タンパク質は、アミノ酸という物質が繋がってできあがったものだが、現存する生物はすべて特定の20種類のアミノ酸をタンパク質の素材として用いている。この事実と、現存する生物の遺伝物質がDNAまたはRNAであるという事実は、この地球上のすべての生物が起源を同じくし、同じ祖先から進化してきたものであるということを示唆している。
細胞
生物の物理的最小基本単位は細胞と呼ばれる構成体である。細胞は膜によって外界と仕切られ、代謝を続けながら、内部でタンパク質合成・エネルギー生成などの活動を行っている。生物の最も原初的な形態は単細胞生物であるが、今日存在する単細胞生物には、遺伝物質を保存する専用器官(細胞核)を持ち、細胞内の諸器官の分化が見られる真核細胞生物と、そのような仕組みを持たない原核生物が存在する。前者は、大きさも仕組みも後者を大きく凌駕するものであり、おそらくは後者の中から前者が進化してきたものと考えられる。
真核細胞
真核細胞は、ミトコンドリアというエネルギー生成専用器官を持っているのだが、現在広く受け入れられている通説では、このミトコンドリアという器官は元々は別の生物であったものが、巨大細胞の中に共生するようになり、やがてはその一器官として同化してしまったものだと考えられている。更に、植物細胞に存在する葉緑体という光合成器官もそのような微小生物による共生を起源とするという見方が有力である。そして、ここに動物と植物の分岐点がある。即ち、ミトコンドリアだけを取り込んだ細胞体から動物が進化し、葉緑体をも取り込んだ細胞体から植物が進化したということである。
有機体
生物の身体は一つの有機体である。有機体とは、その各部分が他の部分との繋がりを維持することによってのみ存在・活動することができるような統合体のことである。その意味では、生物の身体のみならず、生態系や社会も全体として一つの有機体と見なすことができる。ただ、生物の身体の場合、生態系や社会などに比べて、物質的一体性が遥かに高いため、その中の有機的諸関係も遥かに密接であると言うことができる。